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ある保守系ミニコミに書いた文章です、あくまで三浦個人の意見としてお読みください
(代表 三浦小太郎)
去る3月8日、日本人妻斉藤博子さん(帰国事業で朝鮮人の夫と共に北朝鮮に渡り、2001年脱北、日本に再帰国した)が、不法入国幇助の容疑で中国人4人と共に逮捕された。斉藤さんは、中国に脱出後、彼女を保護してくれた中国朝鮮族に、自分たちの要求に従ってくれれば、日本との連絡をつけ、帰国できるようにしてあげようという誘いに応じ、実際にはすでに北朝鮮で死亡していた長女の身代わりに、朝鮮族女性金ヒョニョを、長女と偽って日本に連れて行くことを了解した。そして、日本入国後も、斉藤さんは、中国人の要求のまま、さらに2名の中国朝鮮族を自らの親族として日本に入国させた。
今回の事件について考察する前に、まず斉藤さんのこれまでの人生を見て欲しい。斎藤さんは1941年に生まれ、1961年に、夫で在日朝鮮人の金正二さん一家と共に、北朝鮮帰国事業で北に向った。斉藤さん自身は北朝鮮のことは何も分からず、夫一家が朝鮮総連の「北朝鮮は地上の楽園」という宣伝を信じ込んでの結果だった。斉藤さん自身は総連の宣伝雑誌などを見せられても中々信用する気にはなれなかったが、総連の人が語った「北朝鮮に行っても日本の奥さん達は3年したら帰ることができる。」と言う「里帰り」の言葉に、とうとう夫につき従うことを決意した。実際、この時には長女弥生がすでに生まれており、夫一家が子供を連れて北朝鮮に向かうと言うのに、母親である斉藤さんだけが日本に残る選択は殆どありえなかった。
1961年6月18日、清津に到着した斉藤さん一家は、総連側の宣伝が嘘である事を見せ付けられた。街並みも、人びとの服装も、当時の日本よりも遥かに貧しく見え、と手も『地上の楽園』ではなかったのだ。しかも、船から降りた後は全員が体育館のような倉庫に入るよう指示され、その後すぐに鍵がかけられた。騙されたと思った人びとの中には、日本に帰してくれと抗議するものもいた。
夜になると、各家族はそれぞれ北政府が指定した地域に送られることになった。住む場所も職業も、自由に選ぶことはできないのだ。斉藤さんがやっと入れたアパートも、昼だというのに中は薄暗く、廊下は真っ暗で、高い天井に裸電球が一つあるだけだった。釜戸には釜がかかっており、その横に壷が3つ置いてあったが、食料はほとんどなかった。水道は水が通るパイプの穴しかなく、水はアパートの後ろの川に、早朝に行って汲んでこなければならない。朝早く行かないと川は洗濯に使われてしまうのだ。家での廃水機能もなく、汚れた水はわざわざ4階の部屋から降りて捨てなければならなかった。朝鮮総連が宣伝した、帰国者には住居も食糧や家財道具も準備してあるというのは全て嘘だった。
食糧配給はトウモロコシのような粉が90%、米は10%、斎藤さんの家族は15日に15Kgの配給しかなく、日本から持っていった服などと交換して夫にコメを食べさせなければならなかった。1965年からは、今までは15日間分くれていた配給が、13日分にまず減った。日が経つにつれて生活は困窮し、日本から持ってきた品物はほとんど売ってしまった。そして、ただ貧しいだけではなく、公開処刑を強制的に見せられ、言論の自由どころか北朝鮮への不満を述べることも出来ない恐怖政治下に置かれ、3年たっても里帰りが出来る可能性は皆無だった。
1994年からは、街中に餓死者が溢れ始めた。飢えた人が人肉を食べていると言う噂も流れた。もともと少なかった配給は完全に停止し、工場も稼動しなくなった。長女弥生はこの時期、僅かな銅線を盗んで売ろうとし、見つかって逮捕され、厳しい取調べを受けて獄中で亡くなった。斉藤さんはこのままでは北朝鮮で生き延びることは出来ないと判断し、一家を助ける為に少しでもお金を稼ごうと脱北したのだ。
斉藤さんが不法入国の幇助をしたことは罪を問われるべきだろう。しかし、日本国籍者である日本人妻達が、北朝鮮でこのような悲劇にあい、その娘は飢餓から逃れる為に僅かな盗みをしただけで獄中で死んでいるような状況に対し、日本政府が手を差し伸べていない「不作為の罪」はないのだろうか。
そして、この斉藤さんが脱北した時点では、すでに彼女は高齢である。朝鮮族達は、彼女が日本国籍者であるという一点を利用し、中国人をその親族として日本に入国させる道を選んだ。しかし、もしも斉藤さんが若い女性であり、悪質なブローカーに捕まった場合は、そのまま人身売買や強制売春に売られていった可能性は少なくない。このようなブローカーが暗躍する基本原因は、中国政府が脱北者を難民として保護していないからである。人災と言うべき産業の荒廃と全体主義体制により難民を流出されている北朝鮮と、その難民を難民条約に批准しているにも拘らず保護しない中国政府の犯罪性を免罪している国際社会に、一人の弱い立場の日本人妻だけを責める資格があるのだろうか。
そして、日本政府の問題点は、脱北者を保護する際、充分な科学的調査を行っていない点(今回も親子関係を科学的に検査していれば避けられたことだ)と、元帰国者、日本人妻らを日本に受け入れた後、充分な聞き取り調査や情報収集が殆どなされていないことである。彼らは、核兵器や拉致問題に関する情報などは殆ど持っていないだろう。しかし、北朝鮮における民衆の意識、生活状況、そして日本からの経済制裁などがどの程度影響を与えているかなど、彼らの生活レベルからの情報は北朝鮮を知る為の一次情報として極めて重要なはずである。日本入国後、公的機関がこの斉藤さん一家に丁寧な情報収集を行っていれば、早い段階で偽装は見抜けたはずだ。日本政府は、今回の事件を、脱北者の置かれている情況、並びに帰国者、日本人妻の救援並びに情報収集の問題として総合的に考える契機として欲しい。
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