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NEWS :蓮池透「拉致 左右の垣根を超えた闘いへ」を読んで(上) 
└ 2009-07-21 20:12

蓮池透「拉致 左右の垣根を超えた闘いへ」を読んで(上)

 以前拉致被害者家族会の事務局長をつとめ、家族奪還のために北朝鮮政府に対する強硬な姿勢を主張していた蓮池透氏が、最近は対話路線に変更し、経済制裁の強化による拉致問題解決を求める家族会、救う会と距離が生じていることは、この運動に関わっている人たちの間では周知の事実です。ここで私は、まず、同氏が著した「拉致 左右の垣根を超えた闘いへ」(かもがわ出版)を読むことにより、そして私の共感できるところと、やはり進む道が異ならざるを得ない点を考えて行きたいと思います。

本書第一章の「日本政府の四つの失態」において、蓮池氏は、小泉第一回訪朝時の日本政府の姿勢を「5人生存8人死亡ということを、私たちに受け入れさせようとしました」という、日朝国交正常化優先のものであり、拉致問題を軽視したものだったことを批判しています。また、蓮池氏の弟、薫さんを含む、拉致被害者五人の日本帰国は、北朝鮮・日本両政府にとってあくまで「一時帰国」であり、それを必死の努力で日本に留め「奪還」したのは、家族や日本国民世論の力であったことも指摘しています。

この「一時帰国」に関する蓮池氏の以下の文章は興味深いものがあります。
「北朝鮮は彼らを日本に戻して、何をしようとしたのか。一つは、生きていたのだという事実を日本の国民に知らせ、そうすることで世論を沈めることです。もう一つは、親兄弟、親戚、友人達に、今後はあいたければ北朝鮮に来るように仕向けてこいということです。そういう重たい使命を背負わされて帰ってきたのだと思います。」(29頁)

そして、蓮池氏は、当時弟が北朝鮮のことを礼賛し、自分のことを「朝鮮公民」「俺は使節団だ」などと言っていたことなどを指摘しています。私が最も印象的だったのは、弟の薫さんはじめ、拉致被害者5人が、羽田空港で家族に出会ったときに誰も涙を流さなかったということでした。涙を流したら、北朝鮮での生活がつらかったことを認める事になる。だから彼らは泣けなかったのだと蓮池氏は言います。さらに、自分と弟が口論になって、同席していた母が泣いてしまった時、弟が大変狼狽した。これも「短い時間だけれど親孝行をしてこいという指令を北朝鮮から受けていて、親を泣かせるということは、その指令に反する」からこそ、弟さんは狼狽したのでした。

実は、私が知る範囲内ですが、北朝鮮から国境を超えて逃れてきた脱北者の方々は、全員、この日本で親戚に再会し、また故郷を訪れた後は喜びや懐かしさで涙を流します。それに対し、拉致被害者家族がここまで精神を縛られたまま日本に戻されていたことを思うと、今更ながら北朝鮮政府の恐怖支配の恐ろしさ、そしてこの家族たちを「一時帰国」で北朝鮮に戻そうとしていた日朝両政府、特に日本政府の姿勢は、あまりに拉致被害者の立場を軽んじていたものと思わざるを得ません。

続く、第2章「北朝鮮をどう動かすか」において、まず蓮池透氏は、日本政府の姿勢を「拉致問題を解決する戦略というものをほとんど持っていない」(51頁)と批判します。私も全く同意見です。そして、日本独自の戦略戦術も持たずにいたずらに外国に働きかけても、単に同情的な声を得られるだけで実効性はないと述べ、結局アメリカがテロ支援国家指定を取り下げれば打つ手がなくなってしまったのではないかと現状を批判します。

そして、蓮池氏の最も重要な指摘は次の点です。ここは誤解を招かぬよう同氏の文章をできるだけ忠実に引用します。

「もっと経済制裁を強めて欲しいというのは、もともと『家族会』や『救う会』が要求してきたことです。したがって、(日本)政府が制裁路線でやってきたのは、良く言えば、政府が『家族会』や『救う会』を大切にしてきたということです。一方、悪く言えば、家族の言うことだけをやっていればいいのだと、安易に考えてきたのではないかとも思う。」

「もしかしたら、家族の意向に逆らってでもやる事が、問題の解決にとって必要な場合だってあるでしょう。(中略)ところが、今の政府のスタンスは、家族の言うとおりにしているのだから、批判してもらっては困るという態度のように感じます。求めに応じて制裁をしているのだから、被害者が帰ってこなくても文句を言われる筋合いはありませんと思っているのではないでしょうか。それは、自分たちの無為無策を、家族を口実にして棚上げしているようなものです。」(55〜56頁)

私は蓮池氏の最も重要な問題提起はこの点だと思います。同氏が最近しばしば述べる歴史論などは実は二義的な問題です。日本政府が単に無為無策なのではなく、一応「制裁」を実施し、家族会の意向に沿うように見えて、実はそれ以上の行動を起こさない点が事態の打開を妨げているという蓮池氏の指摘は、現在の日本政府の欺瞞性への的確な批判となっています。

日本政府は、あえて家族会や国民世論の誤解を受けようと批判されようと、北朝鮮との積極的な交渉に踏み出す姿勢もなければ、また、これは私が望む方向ですが、失踪者問題や北朝鮮の人権問題、また脱北者問題などに全面的に取り組み、北朝鮮独裁政権のみならずそれを支える中国一党独裁体制と対峙する決意もなく、ただ、救う会や家族会の意向を最低限実施することで現状をやり過ごしているのです。この時点までは、私は蓮池氏の問題提起を素直に私達は受け止めるべきだと考えます。

しかし、これ以後、ではいかにして現状を動かすか、北朝鮮にアプローチすべきかという点においては、私と蓮池氏の意見は大きく異なっていきます。

蓮池氏は経済制裁は充分な効果は挙げないと述べ、むしろ一般市民に影響を与えている、そんなことをしても北の体制に何の影響もないと述べています。この点は様々な意見があり、経済制裁の影響については冷静な議論も必要でしょう。しかし、北朝鮮は、自らが改革解放や、人権改善、拉致問題の解決の為に前進すれば各国の支援を受けられるのですから、これらの方面で全く前進が見られない以上、少なくとも日本国政府が制裁を緩めるわけには行きません。

私が不満なのは、制裁の理由が拉致と核のみであり、北朝鮮の政治犯収容所などの人権弾圧が、日本政府の経済制裁の理由として明記されていないことです。そして、韓国が李明博政権になって以後、無原則な太陽政策は放棄され、北朝鮮に向けての制裁効果は以前よりも高まっています。今後日本国政府が、現在の中国に対し戦略的アプローチを採ることができれば、北朝鮮を追い詰めることも決して不可能ではありません。

蓮池氏は、北朝鮮はそう簡単に崩壊する国ではなく、また、中国、ロシア、韓国とも協力して完全に経済封鎖できるのなら話は別だが、その局面では、金正日政権が証拠隠滅という最悪の選択をすることもありうると述べています(58頁)被害者家族として最悪の面を考えておくというお気持ちは当然です。実は、北朝鮮が仮に崩壊、少なくとも大きく政体が動揺するような事態になった場合、政治犯収容所もまた証拠隠滅のため抹殺されるという危惧の念を私たちに語った脱北者の方もおりました。しかし、その方は、だからこそ金正日体制に対し、そのような行為に及んだ場合には決して国際社会はその実行者達を許さないというメッセージを送り続けて欲しいと強く語ったのでした。

同じく、拉致被害者を仮に証拠隠滅するようなことをした場合、それが発覚すれば日本国政府は決して許さずにあらゆる行動を取る、と北朝鮮政府に通告するよう日本国政府に求めること、同時に内部からの情報収集を今すぐにでも強化することを求め、最悪の事態が起きぬよう備えることが、まず優先されるべきではないでしょうか。






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