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NEWS :本日アジア人権人道学会 三浦報告概要 
└ 2010-12-11 07:09

アジア人権人道学会 第三回大会


  日 時 12月11日(土)

  会 場 明治大学・御茶ノ水校舎・リバティタワー

          第1会場 6階1063教室 研究報告会

          第2会場 7階1075教室 特定失踪者の訴え

  開 場 1200より


--- 研究報告会 ---

1240〜1325 拉致の原点 ― 帰国事業・シベリア抑留 ―
        荒木和博・(特定失踪者問題調査会代表)
1330〜1415 求められる国連事実調査委員会
         ―北朝鮮、ビルマ、スリランカの事例から
        土井香苗(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)
        須田洋平弁護士
1420〜1505 脱北者問題の現在と定着支援
        三浦小太郎(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表)
1510〜1555 ビルマ・ロヒンギャ難民 国外追放と難民非認定の狭間で
        ゾウ・ミン・ヒュッテ(在日ロヒンギャ協会)
1600〜1645 クメール・ルージュ法廷からの報告
        山本晋平弁護士(ヒューマン・ライツ・ナウ)
1650〜1800 劉 暁波、ノーベル賞受賞の意義
        及川淳子(客員学術研究員)
        麻生晴一郎(ジャーナリスト)

本日、明治大学にて午後からアジア人権人道学会が開催されます。是非ご参集ください。一応、三浦の報告文の概要を公開しますが、現場ではこういう硬い形ではなく、もっと具体例を挙げてサービス(笑いを取る)つもりですので、よろしくお願いします。

アジア人権人道学会 三浦小太郎報告概要
脱北者定着支援体制の諸問題

脱北者の日本到着後の現状

 現在、脱北者(日本が受け入れているのは帰国者、日本人妻およびその親族)が第3国から日本の空港に降り立って以後、生活保護の支給を除くすべての支援は救援団体にゆだねられているのが実情である。日本入国時の資格はなぜか短期滞在の場合もあり、そのときは福祉やアパートの確保すら苦労する。救援団体は団体で借りているアパート、もしくは個人の住居を一時的な住居として提供し、いったん脱北者の仮住所を定めた上で、短期滞在を特別在留資格に偏向するよう入管に申請し、また福祉の手続きを取る。このアパートの経費も、提供する住居もすべて救援団体の負担となる。そして、このような一時確保をしない限り、最初の住居を確保する際には敷金、礼金をすべて団体が支給することになる(住居が決まっていない段階では福祉申請は出来ない)。また、アパートの保証人を、個人が数人分も引き受けているケースはしばしば見られ、社会的に責任を取りきれるか否かの問題も生じる。

 一つの事例としては、ある脱北女性は妊娠しており、入国語すぐに出産したため個人がすべての入院費・手術費を負担した。その幼児には障害があったため、この手術がなければ生命を落としていた可能性が高いが、健康保険にも入会していない状態だったので400数十万の出費を個人が負担し、保険入会後も、法的にはその個人に返却することは出来ていない。

生活保護の是非

 ただし、生活保護は脱北者は本人が申し込めばほぼ全員がまず支給を受ける。実際、一円の貯金もなく、日本を出たときに10代だったとしても既に年齢的には60代、また、北朝鮮にて生まれた帰国者二世の場合は日本語はほとんどしゃべれない状態の彼らには、生活基盤をまず確保するためにはこの保護、そして韓国民団による一時的な支援は不可欠である。

 一部には、ほとんど言葉のしゃべれない外国人労働者も日本入国後すぐに仕事を確保している実例を挙げ、脱北者の自助努力の不足を指摘する声もあるが、これは本質的に移住労働者と難民という全く性質の異なるものを同一視する議論である。後述するが、脱北者たちの精神状態や資本主義社会と北朝鮮の価値観の違いを考えれば、すべての脱北者にそのような早期の適応を期待するのは酷であろう。外国人労働者は、最初から「出稼ぎ」を明確に目的にしており、同時に外国人労働者のコミニュテイも存在する。全くそのような相互扶助システムも資本主義のルールも脱北者には無縁なのだ。

 しかし、ここで問題なのは、生活保護の支給が与える労働意欲の減退と、また同時に、どうしても北朝鮮に残している家族を支援したい意志から、保護を受けつつ隠れて働き、それが発覚して後に保護費から返却を迫られるような事例が時々生じることである。やはり、彼らへの支援は生活保護ではなく、「定着支援」として行わなければ問題は解決しないのだが、今のところ政府はそのような踏み込みをなしえていない。
 
定着支援とは日本語教育、職業訓練

 定着支援で、日本政府にまず期待したいことは、北朝鮮人権法に予算を付けることである。この処置なくしては人権法は脱北者定着支援としては機能し得ない。そして、公的な資金による、日本語教育(最低限3ヶ月〜6ヶ月)、職業訓練(パソコンの最低限の技術、また、資本主義社会における労働概念の教育。自発性の必要さ、接客やサービスの意義など)また社会教育などを、韓国のハナ院のような施設によって行う必要性が高まっている。現在、日本政府はビルマ難民の受け入れを開始しているが、彼らや、かっての中国残留孤児、インドシナ難民などに対する対応は職業訓練を含め遥かに脱北者よりも叮嚀な処置がなされているように思われる。

 脱北者の労働意欲の減退は、生活保護が無原則に行われ、逆に職業訓練や日本語教育は個々人や支援団体の手にゆだねられ、さらに言えば、労働しそれを正直に報告すれば、ほぼその収入の多くを返済しなければならないという保護のシステムを中々受け入れがたいという問題がある。生活保護ではなく、定着支援として、高齢者以外は健康状態を見つつ、期間限定の定着支援のシステムに変えなければ、脱北者の定着はスムーズに行かず、また国民の理解も得にくいだろうと推察される。

4、脱北者の精神状態

 脱北者に接していて実感するのは、まず、北朝鮮という密告体制下での生活による猜疑心が大きな壁となっていることだ。彼らは支援者が善意で支援しているという状態を中々理解できず、自分が利用されているのではないか、この支援者は何らかの利益を支援活動によって得ているのではないか、もしくは社会的名声のために行っているのではないかという疑問を払拭できない。
 同時に、矛盾するようだが彼らの中には極めて激しい形で、支援者や周囲の人たちとの深い人間関係を求めてくることもある。これは、北朝鮮社会、特に帰国者においては、北朝鮮で生まれた住民たちの密告体制への恐怖と、同時に信頼できる友人、帰国者間、親族間の人間関係の深い共同性の両方が共存していたことの反映ではないかと思われる。

 そして、脱北者は帰国者として、約50年前に旅立った、まだ家族や地域共同体が生きていた時代の日本を、北朝鮮での苦難の中極端に理想化して捉えていた傾向があることが多く、現在の個人主義的な日本の人間関係には強い抵抗感を持つ(また、これは事実が誇張されているだけなのだが、日本のマスコミが様々な家族の犯罪を報道するとき、日本が変わり果ててしまったという印象を持つ)。

 さらに北朝鮮社会で重要なのは、「言葉」が、「事実」「真実」「自分の思い」を伝えるためのものではなく、プロパガンダの手段としかみなされていないことである。個人(三浦)的には、これはいかなる収容所や拷問よりも恐ろしい人間性への破壊となると考える。北朝鮮は地上の楽園であり、金正日は偉大な指導者であり、抗日戦争も朝鮮戦争も勝利だった、かつ現在の北朝鮮民衆はすべて金正日を支持しているという「ウソのプロパガンダ」を伝えることが北朝鮮における言語の役割であって、これは脱北者にもしばしば影響を与える。

彼らの一部にいまだに金日成、金正日への敬意の念を持つもの、北朝鮮の宣伝を信じているもの、また、極端な場合は、北朝鮮同様、自らの証言を極めて誇張し、また支援者に喜ばれるような「宣伝」として歪曲し、さらに酷い場合は捏造するのは、このように言語そのものの価値観が徹底的に傷つけられているからだ。これはカルト宗教(もしくは擬似宗教としてのナチスやスターリン体制)支配、全体主義体制支配がもたらしたものだが、脱北者の精神が時として極めて萎縮化して見えるのも、また、逆に過剰な激しさや雄弁となって現れるのも、この「言葉への破壊」と無縁ではないと思われる。
 公開処刑、収容所への恐怖、そして90年代飢餓などを経て、さらに全体主義体制のプロパガンダにさらされてきた彼ら脱北者の精神の傷を解決するのは決して簡単なことではない。
 
北朝鮮に残る家族との関係

 脱北者の多くは、その目的は自らが生き延びることと同時に、第3国にいって働き、残された家族を救出したい、せめて何らかの資金を送りたいという切実な意志である(映画「クロッシング」が優れていたのは、この事実を的確に描いていたからであって、それが反北プロパガンダや綺麗ごとの「自由の戦士・脱北者」といった幻想から映画を救った)。しかし同時に、北朝鮮に残された家族達は、日本や韓国に逃れられた親族が、生活保護やままならぬ就職難の中苦悩しているのを中々理解できず、早急に送金や支援をもとめてくるケースが多い。韓国に一度受け入れられた脱北者が日本に向かい、先日逮捕されたような違法や労働に身を染めていたのも、当初は送金の必要性からであろう(もちろん正当化しうるものではない)。

 そして、家族からの要求は、単に生活苦から送金を求めるだけでは届かないと知ると、今度は、極端な事例(親族が逮捕された、釈放のために賄賂を要求されているなど)を持ち出すことがある。しかしこれは真偽を確かめようもなく、明らかに不自然なケース(私の知る限りでも数例、どう推察してもウソとしか思えない要求にであった)を除けば、家族としては精神的にパニックになり、貯金をはたき、場合によっては支援者に頼んででも送金を行うことがある。

 同時に、家族への送金を行いたいがために、地道な仕事よりも、身に余る大きな事業を夢想するケースも見られ、無理な借金や、店舗の開業などで失敗するケースも無しとしない。北朝鮮の家族への支援は、特別な事例や脱北後はともかく、家族のためにも、また第3国に来た脱北者自身の定着のためにも、心を鬼にして最低限にとどめるべきであろう。

今後の定着支援で「行ってはならないこと」
 
 大切なのは、支援者と脱北者の適切な精神的距離感である。現在の私が悪しき実例であるが、支援者が過度に脱北者に感情移入し、また、逆に脱北者もまた精神的・経済的に依存してしまう関係は、往々にして、不幸な形での対立や衝突に終わり、定着支援としても実績を挙げられていない。
 また、精神的に明らかに不安を抱えている場合、専門家の治療が時として必要である。私の知る限り、2名ほどの脱北者は支援者の力では回復できず、専門の医師によって今復調し社会適応に向かいつつある。ハングルを使える専門医師が少ない現状はあるが、病に対しては素人療法ほど危険なものはない。

 また、数名の脱北者は、ここ日本で数年間を過ごした後、韓国に向かい、そこで就職を始めている。日本の定着支援が今のままのシステムでは、このような事例も増えることと思う。二人とも一時は日本で就職したのだが、様々な事情で退職、もしくは解雇され、日本では再就職が困難だったため、韓国に向かった。もちろんこれは一つの選択ではあるが、このままでは、日本で生まれて北朝鮮に旅立った帰国者、日本人妻はともかく、北朝鮮で生まれた二世達は韓国に行くべきだという結論すら生まれかねない。

 今回、私は脱北者定着支援によるマイナス面を多く報告しすぎたかもしれないが、逆に、今、関東と関西には、それぞれ大学に通学中の若い脱北者が一名ずついる。就職し、結婚し、子どもが授かって家庭を築いている例もいくつかある。彼らに今よりも適切な定着支援システムと、またもっとプロファッショナルな支援者が適切な指導を行えば、このような成功例は増えていくだろうと期待される。

最後に、数名の善意の方々から私が聞かされた言葉がある。一世の在日は、どのような汚い仕事でも力仕事でも行って働いてきた、遥かに貧しくても、生活保護に頼らず、日本語もすべて自力で勉強し、しゃべれなくても働いて子どもを育てた、大学など想像もしなかった、それに比べれば脱北者は遥かに恵まれているではないか、甘やかすのは彼らのためにならないという言葉だった。これは確かに真実の一面をついている。しかし、ここで述べたような心の傷の問題だけではなく、その1950年代、60年代は、日本が高度経済成長に向かう時代だった。仕事も就職環境も今とは異なっていた。その時代の一世、二世の努力を正当に評価するのは当然だが、今の時代にすべてを当てはめるのも無理であろう。

北朝鮮社会は勿論最悪の全体主義であり、人間精神も肉体的生命も破壊していく。しかし、ここ日本も「地上の楽園」ではない。脱北者の方々の心の苦しみに対し、何の想像力も持てないような人間ばかりになったら、それはそれで日本国の道徳的、精神的堕落であるとまで私は思う。少なくとも帰国者やその子ども達は、もしも朝鮮総連の宣伝とそれに組した日本のマスコミ、政党にも責任のある帰国事業がなければ、いまだに私たちの同胞として生きてきたはずの人々である。彼らの運命に思いを馳せ、少なくとも一定の支援を行うことが出来ないほど、日本は物質的にも精神的にも貧しくも無いはずだということだけは、あらゆる自らの失敗を超えて強調しておきたい。(三浦)






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