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NEWS :書籍紹介「なぜ韓国は中国についてゆくのか」荒木信子著 草思社 
└ 2014-05-06 17:40

現在の韓国政権で何よりも不思議なのは、なぜ中国に対してなぜここまで接近するのか、また脱北者問題や人権問題などで中国に対し抗議しないのかという点でした。そして、韓国が日本に対し歴史的に言いたいことがあると仮に理解するとしても、朝鮮戦争時期、北朝鮮を支え結局分断を固定化したのは明らかに中国の軍事的支援があるはずなのですが、その「歴史問題」に全く触れないのも率直な疑問でした。しかし、本書を読んで、韓国への中国への傾斜は、実は民主化時代の幕開けというべき盧泰愚政権の時代からその要素を持っていたことを教えられました。

本書第2章「中韓関係の節目 国交正常化」にその点は詳しく分析されており、確かに80年代の韓国民主化運動の一定の成果と、ソウルオリンピックの成功は、同時に当時の盧泰愚大統領の唱える「北方外交」「全方位外交」をも導くかに見えました。それまでの軍事独裁のイメージを払しょくし、また中韓国交回復で北朝鮮に打撃を与えるなどの外交成果を上げたことも確かです。

しかし、本書は同時に、89年の天安門事件に対し、盧泰愚が明確に中国政府の立場を弁護し「人権外交」を放棄したこと、台湾との断交はやむおえなかったかもしれませんが、日本と比べても韓国の台湾断行の姿勢は外交的に非礼だったこと、しかし、そうして盧泰愚が「一つの中国」を認めたというのに、中国側は北朝鮮と韓国双方と関係を持ち続け、むしろその後朝鮮半島全体への外交的影響力を増していくことが、続く第3章の90年代核危機をめぐる外交分析で明らかにされて行きます。そして、朝鮮戦争における中国軍の参戦という「歴史問題」は、外交的にはもち出されることなく終わりました。

これは私の推測なのですが、当時の盧泰愚大統領は、中国も改革開放経済に向かうと同様政治的にも民主化し、たとえ民主化しなくても、経済的利益から北朝鮮を捨てて韓国の側につき、ある種の北包囲網を中国とも連携して作れると考えていたのではないでしょうか。しかし、それは全くの幻想に終わったのでした。90年代、核開発を推進する北朝鮮に対し、中国が韓国側に立って強い立場で阻止に回る姿勢はほとんど見られなかったのです。

90年代核危機の際、アメリカ、北朝鮮、中国、韓国の錯綜した外交交渉について、本書は時系列と中韓首脳の発言の的確な整理と分析は、しばしば私たちがこの時期の外交を「米朝」レベルを中心に観ようとし、中国がどれだけ影響力を、南北両国に対し持っていたかという、しばしば忘れがちな視点を教えてくれます。少なくともこの時期、韓国が全く主体的な動きをとれなかったのは、それまでの韓国の対中外交が成果を挙げられなかったことの象徴でした。

この後第4章で描かれる「歴史問題」での「中韓共闘」の結果が、現在の朴韓国政権の中国への従属傾向でした。個人的には、第4章まで読み進められた方はもう一度、本書第一章に描かれた現朴政権の対中外交、対中貿易の分析を斜め読みでよいですから再読されることをおすすめします。そうすれば、経済的にも、外交的にも、現在の韓国の中国寄りの姿勢は、朴現大統領の個人的立場を超えた韓国の現実であること、ここから脱却することが韓国にとっていかに困難であるかを再確認することになると思います。

しかし、私たち日本も、韓国を軽々しく批判できるわけではありません。日中国交回復時、台湾を見捨てたのは日本もある意味同様です。国交回復時に、中国の独裁体制、人権弾圧、核軍拡などを批判しその改善を求めた日本の政治家やマスコミは少数にすぎず、中国礼賛記事がほとんどだったはずです。現在でも、日本国は中国の人権問題や、脱北者問題に強く抗議しているわけではありません。中国の巨大な市場の幻想にくらみ、政経分離の建前のもと、実は政治面でも中国に従属しかねない外交官、財界、政治家は日本にも多数存在します。本書は、独裁政権との国交回復、経済のみを重視した国家関係の危うさについて、中韓を越えて様々なことを学ばせてくれます。

そして、北朝鮮の人権問題や拉致問題に取り組んできたつもりの私ですが、中国に対する理解が徹底して不足していたこと、本書に書かれたような中韓の関係に対し意識が薄かったことが、この朝鮮半島を巡る判断を基本的に誤らせたことを実感しました。

第5章「日韓併合時代とはどういうものだったのか」の部分は紹介を控えますが、私が何よりも楽しく、かつ興味深く読ませていただいたのは、「日本国民」として生きてきた韓国人たちの心が、悩みもそして喜びも戸惑いも、その心のひだのようなものまで実感を伴って伝わってくる著者の筆使いでした。そして、朝鮮半島における女性の地位の低さ、様々な残酷な事件は、脱北女性の現在の悲劇にも通じる思いを呼び起こすものでした。ぜひ興味を持たれた方にはご一読をおすすめします。(三浦)

なぜ韓国は中国についていくのか
荒木信子 著 (草思社)

もはや昔の韓国ではない! 1992年の国交正常化を機に中国との関係を深めた韓国。連携の由来を中韓の人的交流、要路の接触、地理的環境、2000年の歴史から探る。

http://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2049.html







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